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東京地方裁判所 昭和61年(ワ)12322号 判決 1988年11月28日

原告

広瀬裕代

右訴訟代理人弁護士

中野博保

被告

戸越ハイツ管理組合

右代表者代表理事

内田昌子

被告

日本ハウズイング株式会社

右代表者代表取締役

高塚恒博

右訴訟代理人弁護士

高井和伸

右訴訟復代理人弁護士

速水幹由

主文

一、原告の請求をいずれも棄却する。

二、訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  原告と被告戸越ハイツ管理組合(以下「被告管理組合」という。)との間において、別紙管理規約目録記載の戸越ハイツ管理組合の管理規約第一六ないし第一八条(以下「本件条項」という。)は無効であることを確認する。

2  被告らは原告に対し、各自金六五八万円及びこれに対する昭和六一年一〇月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

4  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求の原因

1  原告は、別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)の一階部分一〇三号室(以下「本件店舗」という。)を所有しており、自らが経営して又は第三者に賃貸して、昼間は喫茶店、夜間は深夜営業のスナックとして本件店舗を使用していた。

被告管理組合は、本件建物の区分所有者によって構成され、本件建物の敷地、共用部分の管理等を行うことを目的とする権利能力なき社団である。

被告日本ハウズイング株式会社(以下「被告会社」という。)は、被告管理組合から本件ハイツの管理を委託された管理会社である。

2  被告管理組合は、昭和六〇年一〇月一九日の総会において被告管理組合の管理規約を改正し(以下改正後の管理規約を「本件規約」という。)、本件条項を新設した。

しかしながら、被告管理組合は、原告に対し、右総会の召集通知を怠り、原告は右総会に出席することができなかった。したがって、右総会の決議(管理規約の改正)は無効でる。

また、建物の区分所有等に関する法律三一条一項は、「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすときは、その承諾を得なければならない」と規定しているところ、本件規約一六条ないし一八条は、運用の仕方いかんによっては、原告の本件店舗の区分所有権に対する重大な制限となり営業活動の死活を制することになるので、右規約の設定については原告の承諾を要するというべきである。

しかるに、本件条項の設定については、原告の承諾を得ていないので、本件条項は無効である。

3  原告は、昭和六一年四月二二日、木下雄二(以下「木下」という。)に対し、本件店舗をラーメン屋営業のため賃貸し、木下が同年五月初旬ころ、本件店舗の改装工事を始めたところ、当時の被告管理組合の理事長であった小野塚忠平、同副理事長であった恩田富江及び被告会社の社員であった山田らは、同月二〇日ころから同月二九日ころまでの間、交互に木下及び原告に対し、本件店舗においてラーメン屋を営業することはできない旨を申し入れ、執拗に本件店舗の改装工事を中止するように要求し、その結果、木下は、本件店舗においてラーメン屋を営業することを断念し、同年六月四日右改装工事を中止した。

さらに、被告管理組合は、同年六月四日の理事会において、木下が本件店舗においてラーメン屋を営業することを承認しないことを決定し、同月一四日の臨時総会において、原告の承諾を得ることなく右不承認の決議をした。

4  原告は、被告らの右のような不法行為により、次にような損害を被った。

(一) 木下に対する損害賠償金三五〇万円

木下は、本件店舗においてラーメン屋を営業することができなかったため、原告との間の本件店舗の賃貸借契約を解消するとともに、同人が原告に対して交付していた礼金八〇万円、賃料五〇万円(昭和六一年五月及び六月分)、造作代二五〇万円、火災保険料三万円の返還及び木下が本件店舗の改装工事を依頼した有限会社インテリア一心に対して支払った損害賠償金一二三万三五〇〇円などの支払を求める訴えを提起し、その控訴審(東京高裁昭和六二年(オ)第三七一一号、同昭和六三年(ネ)第一一四五号・原審・東京地方裁判所昭和六一年(ワ)第一一九九五号)において和解が成立し、原告は木下に対し、右請求金員のうち三五〇万円を支払うことになった。

(二) 得べかりし賃料収入の喪失二五〇万円

原告は、被告らの前記不法行為のため、昭和六一年五月一日から昭和六二年二月末日までの間、本件店舗を賃貸することができず、右期間の賃料収入を失った。

本件店舗の賃料は一か月二五万円であるから、右期間の得べかりし賃料は二五〇万円である。

(三) 本件店舗の修復費五八万円

木下は、本件店舗の改装工事を途中で中止し、損壊した電気配線、解体した造作残材などを放置した。そのため原告は電気配線を取りはずし、残材の撤去をし、その費用として五八万円を支出した。

5  よって、原告は、被告管理組合との間で、本件条項の無効確認を求めるとともに、被告らに対し、不法行為に基づく損害賠償として六五八万円及びこれに対する不法行為の後である昭和六一年一〇月一七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1は認める。

2  同2のうち、原告主張の日に規約改正のあったこと、改正された現行規約には本件条項が存在すること及び原告が右規約改正のための総会に欠席し、その承諾を得ていないことは認め、その余は否認する。

原告は、本件建物内に居住しておらず、また被告管理組合に対して通知を受けるべき場所を通知していなかった。

そこで、被告管理組合は昭和六〇年一〇月一一日、本件店舗の登記簿に記載されている原告の住所(東京都品川区大崎五丁目五番一二の三〇一号)宛に総会召集の通知を郵送するとともに、被告管理組合の掲示板に総会召集の掲示をした。なお、右郵便は返送された。

また、本件規約条項と同内容の条項は、右規約改正前から存在していたのであり、本件規約条項は新設されたものではない。

3  同3のうち、木下が本件店舗の改装工事を開始したこと、被告管理組合の理事会及び総会で木下の営業を承認しない旨の決議がなされたことは認め、原告、木下間の賃貸借契約は不知、その余の事実は否認する。

4  同4(一)のうち原告主張の和解が成立したことは認め、その余は不知。同(二)(三)はいずれも不知。

第三  証拠<省略>

理由

一本件条項の無効確認請求について

1  原告が本件店舗を所有していること、被告管理組合が本件建物の敷地、共用部分の管理等を目的とし、本件建物の区分所有者によって構成された権利能力なき社団であること、被告管理組合が昭和六〇年一〇月一九日の総会において被告管理組合の管理規約を改正し、本件条項を設けたこと、原告が右総会に欠席したこと及び原告が本件条項について承諾していないことはいずれも当事者間に争いがない。

2  原告は、本件条項について決議をした総会の召集通知が原告に対してなされていないので、右決議は無効であると主張するので、この点について検討するに、前記争いのない事実並びに<証拠>によれば、被告管理組合は、昭和六〇年一〇月一一日、規約改正を議案とする総会を招集することとし、その通知を、規約案とともに本件建物の各区分所有者に発送し、同時に本件建物内の掲示板に掲示したこと、原告は、当時本件建物に居住しておらず、また、被告管理組合に対して総会の案内等の連絡先を通知していなかったこと、そこで、被告管理組合は、本件店舗の登記簿上の原告の住所を調べ、その住所(東京都品川区大崎五丁目五番一二の三〇一号)宛に右招集通知及び規約案を送付したが、原告は当時静岡県伊東市に転居していたので返送されてきたこと、被告管理組合は右招集通知を本件店舗宛に送付することはしなかったこと、原告は昭和六〇年一〇月一九日に開催された被告管理組合の総会に出席しなかったことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

ところで、建物の区分所有等に関する法律三五条によれば、集会の召集の通知は、各区分所有者に発すべきこととされており(同条一項)、右通知は、区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知しなかったときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすべきことになっているところ(同条二項)、前記認定事実によれば、原告は本件建物内に居住しておらず、また管理者に対して集会の召集の通知を受けるべき場所を通知していなかったことが認められる。

したがって、被告管理組合としては、総会召集の通知を原告の所有する専有部分(本件店舗)が所在する場所に通知すべきであったが、前記認定事実によれば、被告管理組合はこれを行わず、本件店舗の登記簿上の原告の住所に通知したため、これが原告の現住所に到達せず返送されたことが認められるので、右総会召集の通知手続には瑕疵があるというべきである(原告広瀬裕代本人尋問の結果によれば、原告は、本件店舗の前に設置していた煙草の自動販売機の管理人に本件店舗の郵便受けに配達された郵便物を原告の現住所宛に転送するように依頼していたことが認められるので、被告管理組合が右召集通知を本件店舗の郵便受けに配達すれば、右通知は原告に転送されたはずであった。)。

しかしながら、総会召集の手続に瑕疵があったとしても、それによって当然総会の決議が無効となるものではなく、右瑕疵が重大な瑕疵である場合に限り無効となるものと解される。

そこで、さらに検討するに、前掲甲第四号証によれば、右総会の決議は、議決権総数六〇人のところ、出席者及び委任状提出者計五七人の一致でなされたことが認められ、右事実にかんがみると、右招集の通知の欠缺は総会決議に影響を与えるものとは認められないで、右瑕疵をもって、決議の無効原因となるような重大な瑕疵ということはできない。

次に、原告は、本件条項は原告の権利に特別の影響を及ぼすものであるにもかかわらず、原告の承諾を得なかったので無効であると主張するので、この点について検討する。

一般に、建物の区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない(建物の区分所有等に関する法律六条一項)義務を負っており、このような一般的な制約を規約において具体的に規定したとしても、それが右の一般的制約の範囲である以上、これをもって一部の区分所有者の権利に特別の影響を与えたものということはできない。

そこで、本件規約一六条について検討するに、同条一項は「店舗区分所有者は次の各号に該当する業種について営業することができない。①戸越ハイツの住環境を著しく阻害する風俗営業等②著しく臭気を発生する業種又はおびただしい煙を発生する業種(中華料理店、焼肉店、炉端焼店、焼鳥屋等)」と規定し、同条二項は、右禁止条項に抵触するおそれのある業種を営業しようとする場合は、事前に理事長と打ち合わせ、その承諾を得るように規定しているが、<証拠>によれば、本件建物は一階が店舗部分、二階以上が住居部分の鉄骨鉄筋コンクリート造一一階建の建物であり多数の区分所有者が共同生活を営んでいることが認められ、右事実にかんがみると、たとえ、一階部分が店舗部分であるとはいえ、一階部分において本件建物の住環境を著しく阻害する風俗営業、あるいは著しい臭気又はおびただしい煙を発生する業種の営業を行うことは、他の区分所有者の快適な生活を阻害し、平穏な住環境を損なうものであるから、これが本件建物の区分所有者の共同の利益に反することは明らかである。

したがって、本件建物の店舗部分において右のような営業をすることを禁止することには合理性があり、それは本件建物の区分所有者が一般的に負っている制約の範囲内のものというべきである。

なお、本件規約一六条一項二号括弧内には、禁止業種として中華料理店、焼肉店、炉端焼店、焼鳥屋等が例示的に列挙されているが、その趣旨は、右各業種そのものを一義的に禁止したものと解すべきではなく、右業種であっても著しい臭気又はおびただしい煙を発生するに至らないもの、あるいはこれらの防除設備を備えたものは禁止されていないものと解すべきである(なお、原告は、本件規約が決議されたころ、本件店舗において右のような業種を営み、あるいは右のような業種のために本件店舗を賃貸していたわけではないから、本件規約の設定により具体的な影響を受けたものではない。)。

次に、本件規約一七条についてみるに、同条一項は、「店舗区分所有者が、カラオケ等騒音の原因となるものを使用し深夜にわたり営業する場合は、他の区分所有者および占有者の迷惑とならないように配慮しなければならない。」と規定しているが、このことは区分所有者が当然配慮すべき事柄であるから、右条項が原告の権利に特別の影響を及ぼすものでないことは明らかである。

また、同条二項は、「店舗区分所有者は、店舗前道路に無償で簡易な看板等を設置することができる。」と規定しているが、前掲甲第五号証によれば、店舗前道路は店舗部分の区分所有者の専有部分ではなく、共用部分であると認められるので、同項は、店舗部分の区分所有者に対し、店舗前の道路上に無償で看板等を設置することを特別に許容した条項というべきであり、右条項は、むしろ本件店舗の所有者たる原告に利益を与えるものであって、右条項が原告の権利に特別の影響を及ぼすものということはできない。

そして、同条三項は、同条二項により無償使用を許された道路上に設置する看板の設置場所、看板の規模、構造などにつき隣接の区分所有者及び被告管理組合の理事長と協議すべきことを定めたものであり、これも原告の権利に特別の影響を及ぼすものでないことは明らかである。

また、同条四項は、「店舗に付属するシャッターに看板文字等を書く場合には著しく外観を損なう文字・色彩等を施すことはできない。なお、シャッターの維持管理は店舗区分所有者がその責任と負担でおこなうものとする。」と規定しているが、前掲甲第五号証によれば、店舗部分に付属するシャッターは店舗部分の区分所有者の専有部分ではなく、店舗部分の区分所有者が無料で専用使用を許されたものであり(本件規約一四条一項、別表3)、本来、シャッターの通常の用法に従って利用すべきものであること(本件規約一三条)が認められる。

したがって、本件規約一七条四項は、店舗部分の区分所有者に対し、シャッターの本来の用法の外にシャッターに看板文字などを書くことを特別に許容したものであり、その場合に、シャッターに建物の外観を著しく損なう文字・色彩等を施すことを禁止するとともに、当該店舗部分の区分所有者がその維持管理をなすべきことを規定したものであって、右条項が原告の本来の権利に特別の影響を及ぼすものではないことは明らかである。

次に本件規約一八条についてみるに、同条一項は店舗内装工事をする場合の作業時間、同条二項ないし四項はカラオケ等の騒音に対する防音設備の設置並びにその場合の事前協議及び他の区分所有者からの苦情申立てに対する対応などについて規定しているものであり、これらはいずれも建物の区分所有者の共同の利益のため各区分所有者において当然配慮すべき事柄であると考えられるので、右各条項が原告の権利に特別の影響を及ぼすものということはできない。

以上のように、本件規約はいずれも原告の本来の権利に特別の影響を及ぼすものとは認められない。

なお、原告は、本件規約の運用の仕方いかんによって、原告の本件店舗に対する区分所有権に対する重大な制限となり、営業活動の死活を制することとなると主張するが、本件において、右のような主張事実を認めるに足りる証拠はない。

したがって、本件規約につき原告の承諾を得ていないとしても、これを無効ということはできない。

以上により、本件規約の無効確認を求める原告の請求は理由がない。

二損害賠償の請求について

<証拠>によれば、原告は昭和六一年四月二二日、木下に対し、本件店舗をラーメン屋営業のため賃貸し、木下が同年五月初旬ころ、本件店舗の改装工事を始めたところ、これを知った被告管理組合において右ラーメン店が本件規約一六条一項二号によって禁止されている中華料理店に当たるのではないかということが問題となり、同年六月四日、木下を被告管理組合の理事会に呼んで事情を聴取したこと、木下は、右理事会において、本件店舗においては他店の分も含めた豚骨ラーメンのスープを調理するつもりであり、通常のラーメン店とは異なり著しい臭気が発生することは避けられないこと、そのほかにチャンポン材料、餃子などの調理もするので相当程度の煙や臭気が発生すること、本件店舗は中原街道に面しており、午前八時から翌朝午前四時までの深夜営業をするので、夜中に乗用車やオートバイで来店する顧客が多く、その停車、発車の騒音を防ぐことはできないこと、本件店舗には夜間によく目立つように点滅式のネオン看板を掲げること、保健所からは店舗床下に数メートルの深さの浄化槽を設置するよう、また消防署からは本件建物の外壁に沿って屋上まで換気筒を設置するように指導されているが、換気筒の設置は難しいことなどを説明したが、同人の説明態度は、同人の営業が本件建物の住民に迷惑を掛けるような業種であることを殊更に示すような態度であったこと、そこで、被告管理組合の理事会は、木下の右営業は本件規約一六条一項二号に当たりこれを承認することができないとの結論に達し、同月一四日の臨時総会において右営業を不承認する旨の決議を経た上、木下に対し、その旨を通知したことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

なお、原告は、被告管理組合の理事長であった小野塚忠平、同副理事長であった恩田富江及び被告会社の社員であった山田らが昭和六一年五月二〇日ころから同月二九日ころまでの間、交互に木下及び原告に対し、執拗に本件店舗の改装工事を中止するように要求したと主張し、前掲甲第一七号証、原告広瀬裕代本人尋問の結果によれば、被告会社の社員であった山田が木下に対し、本件店舗の改装工事を中止するように申し入れたことが認められるが、右申し入れが執拗になされたものと認めるに足りる証拠はなく、また、小野塚忠平、恩田富江が右改装工事の中止を執拗に申し入れた事実を認めるに足りる証拠はない(<証拠>によれば、同人らは、前記臨時総会の決議後に、木下に対し、営業禁止の申し入れをしたものである。)。

以上によれば、被告管理組合の理事会は、木下の業務が著しい臭気及びおびただしい煙を発生する業種であり、その営業形態が本件建物の住民の生活を害するものと判断して、木下の営業を承認しない旨の結論を出したものと認められ、木下から前記認定のような説明を受けた理事会としては、右のように判断するのは当然のことと考えられる。

したがって、被告管理組合が、理事会で木下の本件店舗の営業を承認しない旨の結論を出し、臨時総会で右決議をしたことを不法行為ということはできない。

そして、小野塚忠平、恩田富江は、臨時総会における不承認の決議をも経た上、木下に対し、本件店舗における営業を承認しない旨を申し入れたのであるから、同人らの右行為をもって木下あるいは原告に対する不法行為と認めることはできない。

また、前記認定事実によれは、被告会社の社員であった山田が木下に対し、本件店舗の改装工事を中止するように申し入れたことが認められるが、右認定のように、木下の業種が本件規約一六条一項により禁止された業種であることにかんがみると、右申し入れをもって直ちに不法な行為ということはできない。

その他、小野塚忠平、恩田富江及び山田らの行為が原告に対する不法行為に当たると認めるに足りる証拠はない。

したがって、その余の点を判断するまでもなく、原告の不法行為の主張は理由がない。

三よって、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官髙橋正 裁判官秋武憲一 裁判官宮坂昌利)

別紙管理規約目録

第一六条(業種の制限)

一 店舗区分所有者は次の各号に該当する業種について営業することができない。

1 戸越ハイツの住環境を著しく阻害する風俗営業等

2 著しく臭気を発生する業種又はおびただしい煙を発生する業種(中華料理店、焼肉店、炉端焼店、焼鳥屋等)

二 前項第1号および第2号に抵触する恐れのある業種を営業しようとする場合は、事前に第三六条に定める理事長と打合わせ、承認を得ること。

第一七条(営業の制限)

一 店舗区分所有者が、カラオケ等騒音の原因となるものを使用し深夜にわたり営業する場合は、他の区分所有者および占有者の迷惑とならないように配慮しなければならない。

二 店舗区分所有者は、店舗前道路に無償で簡易な看板等を設置することができる。

三 前項の看板を設置する場合、店舗区分所有者は、設置場所・看板の大きさ・構造を隣接の区分所有者および理事長と十分協議し設置しなければならない。

四 店舗に付属するシャッターに看板文字等を書く場合には著しく外観を損なう文字・色彩等を施すことはできない。なおシャッターの維持管理は店舗区分所有者がその責任と負担でおこなうものとする。

第一八条(店舗内装制限)

一 店舗内装工事を行う場合には、作業時間は午前八時から午後五時までとし、騒音・振動を伴う工事については日曜日・祭日の作業は行わないものとする。

二 店舗区分所有者は、カラオケ等騒音の原因となるものを使用する場合には十分な防音設備を施さなければならない。

三 前項の場合に、施工前に、第三六条に定める理事長に届け出て十分な協議を行うものとする。

四 前二項の規定を怠ったために発生する他の区分所有者からの異議・苦情の申し立てについては当該店舗区分所有者の責任と負担において解決するものとする。

別紙物件目録

(一棟の建物の表示)

所在  品川区荏原二丁目六〇三番地二、同番地四、六〇二番地二、同番地五 構造  鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根一一階建

床面積

一階   343.83平方メートル

二ないし一〇階

287.45平方メートル

一一階  167.13平方メートル

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